1 生前遺産分割とは
最近の相続は、遺産分割をめぐって、実によくもめる。
民法が変わり家督相続(長子相続)がなくなったことも要因の一つであるが、個人それぞれが
「権利」を主張するような世の中になったことも大きい。
こんな時代であるから、親が自分の財産処分を子供任せにしておくと、相続のとき、とんでもな
いことになってしまうのである。
それまで仲が良かった家族が、親の財産をめぐってケンカするなんてことは愚の骨頂であり、あ
ってはならないことである。
そんな思いから、自分の意思がしっかりしているうちに財産処分をきちんと決めておこう(生前遺
産分割)ということを、平成一二年三月に上梓した前作『生前遺産分割のすすめ』で提唱した。
そこでは、@「生前遺産分割」の必要性、A生前遺産分割に必要な民法や相続税法の基礎知
識、B「生前遺産分割」と併用する効果のある「生前相続対策」の処方箋をまとめたうえで、「コッ
ソリ派」向きの遺言、「オープン派」向きの死因贈与契約、さらにはこれらを合体させた税務上もっ
とも有効な生前遺産分割の方法を披露した。
また、これらを実行するのに一番税負担が軽くなる方法はこうだということも書いておいた。
そうこうしているうちに、平成一五年には、この生前遺産分割を推奨する税制が創設され、これ
まで筆者が提言してきたことが、ますます確固たるものとなってきたのである。
この生前遺産分割を後押しする制度を相続時精算課税制度というが、高齢者の保有する資産
を次世代に円滑に移転(つまり生前遺産分割)させることを目的として創設されたものである。
ともあれ、税制も、親の財産を早期に子へ承継させることを奨励するようになったわけで、後は
どの方法で生前遺産分割をするか、これまでの遺言か、それとも死因贈与か、はたまた新たに
創設された相続時精算課税制度の贈与かということであるが、本書では、これらを選択する際の
考え方、税務上のメリット、デメリットなどをわかりやすくまとめ、さらには、遺言信託や成年後見
制度など、生前遺産分割を確実に実行する手立ても紹介しておいた。
前作と併せて本書を活用していただければ、より一層、生前遺産分割の必要性、基礎知識、進
め方、考え方、実行手順などが理解してもらえるものと確信している。
そして、一人でも多くの方に生前遺産分割を実践していただき、円満に、そして少しでも多くの
財産を次代に承継されることを祈念している。
最後に確認しておくが、「生前遺産分割」は、少しでも多くの財産を次代へ残すため、各相続人
が納得する処分方法を生前に決めておくというものである。
(「続・生前遺産分割のすすめ」より抜粋)
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