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平成27年から相続税はこうなった!

3. 改正「相続時精算課税制度」のしくみ

相続時精算課税制度はこうなった

(1)相続時精算課税制度の改正
「相続時精算課税制度」とは、一定の直系親族間贈与に認められた贈与の特例である。
相続時精算課税制度には、贈与財産を特定しない一般の相続時精算課税制度(以下、一般型という)と使途を住宅取得等資金に限定した住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度(以下、住宅型という)がある。
今回の改正では、次のように一般型の適用要件が緩和され、さらには、一般型と同じ内容の孫型が創設され、一層活用しやすいものとなった。この改正は、平成27年1月1日以後の贈与に適用される。

【一般型】

贈与者の年齢 65歳以上の親から60歳以上の親に要件が緩和された

【孫型】

贈与者の年齢 60歳以上の祖父母
受贈者の範囲 20歳以上の孫

なお、孫型は一般型と内容が同じであることから、本書ではこの項以外は、孫型を一般型に含めて記載している。

(2)相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は、通常の贈与とは違い、贈与者の相続時に相続財産として、相続税の対象に含めることとなっている。
その場合の評価額は、相続時の評価額ではなく、贈与時の評価額で計算することとなっており、その贈与時に納めた贈与税額があるときは、これを相続税額から控除して精算することとなっている。

①一般型
一般型は、60歳以上の親、祖父母(現行65歳以上の親)から20歳以上の直系卑属の推定相続人及び孫(現行は直系卑属である推定相続人)への贈与を対象とする制度で、2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、それを超える部分の金額に対して一律20%の税率で贈与税がかかるというものである。

60歳以上の親、祖父母→20歳以上の直系卑属の推定相続人、孫
・2,500万円までは贈与税が非課税(特別控除)
・2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税
・贈与財産はなんでもよい
・贈与は、何回にわたっても、また数年にわたっても適用可
・贈与財産は、親の相続時にその贈与時の評価額で相続財産に加算
・納めた贈与税相当額は相続税額から控除(又は還付)

(注1)年齢は、贈与のあった年1月1日現在で判定する。
(注2)養子縁組した子や孫にも適用あり。

(例)父から子へ3,000万円贈与した場合

(例)父から子へ3,000万円贈与した場合

②住宅型
一般型は、財産の種類や資金使途を問わない贈与であるが、資金使途を住宅の取得や増改築に限定した贈与にも相続時精算課税制度がある。これを、住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度(住宅型)という。
この制度は、親(年齢制限なし)から満20歳以上の直系卑属の推定相続人へ自宅の取得資金を贈与する場合に認められる制度で、2,500万円までは贈与税がかからず、それを超える部分の金額に対して、一律20%の税率で贈与税が課税されるというものである。

(イ)制度の概要

親→20歳以上の直系卑属の推定相続人
・2,500万円までは贈与税が非課税(特別控除)
・2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税
・住宅の取得等に充てるための金銭に限られる
・贈与は、何回にわたっても、また数年にわたっても適用可
・贈与財産は、親の相続時にその贈与時の評価額で相続財産に加算
・納めた贈与税相当額は相続税額から控除(又は還付

(注1)年齢は、贈与のあった年1月1日現在で判定する。
(注2)養子縁組した子にも適用あり。

(例)母から子へ住宅取得等資金3,000万円贈与した場合

(例)母から子へ住宅取得等資金3,000万円贈与した場合

(ロ)制度の対象となる住宅取得等資金
この制度は、次の要件を満たす住宅を取得するための資金及び増改築するための資金を贈与する場合に限り、適用が認められる。したがって、これらに使われない資金の贈与であったり、これらの要件に合致しない住宅を取得等するための贈与である場合には、この制度の適用が受けられず、通常の贈与扱いになってしまい、高額な贈与税を納めなければならないこともあるので注意が必要である。

①取得、建築する場合 イ.新築又は築後経過年数が20年以内(一定の耐火建築物である場合は25年以内)であること
ロ.家屋の床面積(区分所有の場合は、その区分所有する部分の床面積)が50㎡以上であること
ハ.その家屋の床面積の2分の1以上がもっぱら居住の用に供されていること
ニ. 建物等の所在が日本であること
ホ.その他、一定の要件を満たすもの
②増改築の場合 イ.工事費用が、100万円以上であること
ロ.増改築後の家屋の床面積(区分所有の場合は、その区分所有する部分の床面積)が50m²以上であること
ハ.その他、一定の要件を満たすもの
③土地部分の取扱い ①と②とともにする土地又は借地権等の取得も対象となる
また、土地等の先行取得にも適用がある

また、受贈者は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅等を取得等し、同日までに居住の用に供する(地帯なく居住の用に供することが確実であると見込まれる場合を含む)ことがこの適用を受けるための条件なので、この点にも注意が必要である。

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新相続時精算課税制度のしくみ

①一般型
一般型は、60歳以上の親、祖父母(現行は65歳以上の親)から20歳以上の直系卑属である推定相続人及び孫(現行は直系卑属である推定相続人)への贈与について認められた贈与の特例で、2,500万円までの贈与は非課税、それを超える部分の金額に対しては、一律20%の税率で贈与税がかかるというものだが、その贈与した財産の価額は、相続時に相続財産として持ち戻し(加算)をして相続税を計算し、その際に納めた贈与税額がある時は、これを精算(相続税額から控除)して課税するというものである。
この制度を活用すると、2,500万円までの贈与については贈与税がかからず、また、2,500万円を超える部分があっても、20%という低い税率(通常の贈与は55%(現行は50%))で計算した税額を納めるだけで済むので、大きな財産を生前贈与することができる。
また、この制度は、父、母、祖父、祖母ごとに、また子、孫ごとに適用選択ができることとなっているので、たとえば、父親から長男には適用するが、母親からは適用しないとすることもできるし、兄弟のうち一人だけに適用することもできるというように、個別に選択適用することもできるので、いろいろな組み合わせをすることができる。 ただし、この制度は、一度選択すると二度と取消しはできないので、選択をする際は慎重にしなければならない。

(例1)子が父母から財産の贈与を受けた場合

子は、父母からのそれぞれの贈与について、この制度の適用を受けるかどうか選択することができる。いずれの贈与について選択することもできるし、片方だけ選択して、もう片方は選択しないこともできる。また、子が2人以上いるときは、それぞれの子について選択することができる。祖父母から孫への贈与についても同様である。

(例2)長男、次男が父から財産の贈与を受けた場合

長男、次男はそれぞれ、父からの贈与について、この制度の適用を受けるかどうかを選択することができる。長男も次男も選択することができるし、長男は選択するが、次男は選択しないとすることもできる。また、母や祖父母からも財産の贈与を受けた場合にも、長男、次男はそれぞれ適用するかどうか選択することができる。

②住宅型
住宅型とは、親(年齢制限なし)から満20歳以上の直系卑属である推定相続人に対して、自宅の取得等の対価に充てるための金銭を贈与する場合に認められる贈与の特例で、2,500万円までの贈与は非課税、それを超える部分の金額に対しては、一律20%の税率で贈与税がかかるというものであるが、その贈与した財産の価額は、相続時に相続財産として持ち戻し(加算)をして相続税を計算し、その際に納めた贈与税額がある時は、これを精算(相続税額から控除)して課税するというものである。 なお、この制度の適用は、平成26年12月31日までの期間に限定されている。

③受贈者、贈与者要件
受贈者がこの特例を受けるには、次の居住要件を満たしていなければならない。。

住宅取得等資金を取得したときに日本に住所を有している
住宅取得等資金を取得したときに日本に住所はないが日本国籍を有している
(受贈者又は贈与者が贈与の日前5年以内に日本に住所を有したことがある場合に限る)

④適用要件
この規定を受けるためには、次の手続が必要である。

  • イ 選択届出書の提出
  • この制度の適用を受けようとする受贈者は、その選択をしようとする最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、納税地の所轄税務署長に対して、「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければならない。相続時精算課税選択届出書を提出をしなかった場合には、適用が受けられないので注意が必要である。
  • ロ 贈与税の申告書の提出
  • この制度適用の贈与を受ける場合には、たとえその年の贈与税額がゼロであっても、贈与税の(期限内)申告書を提出しなければならない。ただし、相続開始の年の贈与については、贈与税の申告書を提出しなくてよい。
    選択届出書の届出もなく、また、申告書の提出もない場合は、通常の贈与があったものとして贈与税が課税されることとなり、この場合には無申告加算税や延滞税も課税されるので注意が必要である。
    なお、納めるべき贈与税額がある場合は、贈与税の申告期限までに贈与税額を国に納めなければならない。

【相続時精算課税制度のしくみ】 ※画像クリックで拡大します

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一般型と住宅型はこう違う

一般型と住宅型は、大枠では同じだが、若干の違いがある。
これをまとめると、次のようになっている。

  一般型の場合 住宅型の場合
贈与財産 制限なし 金銭
資金使途等 制限なし 自宅取得資金又は自宅の増改築資金、原則として贈与年の翌年3月15日までに取得・居住すること
贈与者 60歳(現行65歳)以上 年齢制限なし
受贈者 20歳以上の直系卑属20歳以上の直系卑属である推定相続人である推定相続人・孫(現行は直系卑属の推定相続人) 20歳以上の直系卑属である推定相続人
特別控除 2,500万円 2,500万円
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特別控除枠の残額はどうなる?

①住宅型の特別控除のうち使い残した特別控除
住宅型の特別控除のうち使い残した特別控除がある場合は、親の年齢に関係なく一般型の適用が受けられることとなる。
また、住宅型の適用を受ける年に、住宅取得等資金以外の財産の贈与が、住宅取得等資金の贈与の前にあったとしても、その年に住宅型の適用を受ける時は、その住宅取得等資金以外の財産についても相続時精算課税制度の適用対象となってしまうので、注意しておきたい。

②一般型と住宅型の特別控除の併用
相続時精算課税制度には、一般型と住宅型の2つがあるが、これらの制度を併用して使うことはできない。つまり、一般型と住宅型のそれぞれに、重複して2,500万円の特別控除額が使えるわけではないので、その点注意が必要である。

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住宅型の要件を満たさなかったら?

住宅型は、一定の居住要件を満たさなかった場合には適用が受けられないが、居住の用に供することが確実であると見込まれるとして、この適用を受けた場合において、その翌年12月31日までに居住の用に供していない時には、同日から2ヶ月以内に修正申告書を提出しなければならないこととなっている。
この場合には、贈与者の年齢によって、①通常の贈与になるのか、それとも②一般の相続時精算課税制度の贈与になるのか違ってくるが、通常の贈与に該当することとなった場合には、かなりの贈与税がかかってくるので、この点に十分注意しておかなければならない。

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相続時精算課税を一度使うと・・・

一般型も住宅型も同じだが、いったんこの制度を使うと、この制度を適用した贈与者からの贈与は、一生、相続時精算課税制度を使わなければならない。
つまり、今年は相続時精算課税制度を使って贈与をし、来年は通常の贈与で贈与をするということはできないし、同じ年に同じ贈与者から相続時精算課税制度を使った贈与と通常の贈与を使うということはできないことになっている。
途中で元には戻せないので、選択に際してはよく検討して決めなければならない。

(例)
平成25年分 相続時精算課税制度を適用して2,000万円を贈与
平成26年分 同じく相続時精算課税制度を適用して500万円を贈与
平成27年分 110万円を贈与→相続時精算課税制度の贈与として取り扱われる。この贈与だけを通常の贈与とすることはできない。

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養子にも適用がある!?

相続時精算課税制度は、養子縁組をした子にも適用がある。
したがって、養子となった子でも、年齢基準を満たしておれば、養父母からも実の親からもこの制度の適用を受けることができる。
年齢基準は、先にふれたようにその年の1月1日現在で判断するが、養子がこの制度の適用を受けるためには、贈与を受ける日より前に、養子と養親という関係になっていなければならないので注意が必要である。
つまり、養子縁組後で、かつ、年齢基準を満たす場合に適用があるのである。

なお、適用は、養父、養母、また、実父、実母ごとに個別に選択適用することができる。

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使い分けはどうする?

この制度は、一定の要件を満たす贈与者から満20歳以上の直系卑属である推定相続人や孫への贈与について適用される制度であるが、この制度では、贈与者ごとに、また、受贈者ごとに選択適用できることとなっている。
したがって、たとえば、父から長男に対する贈与にはこの制度を適用し、次男には通常の贈与を適用するということもできるし、また、母からの贈与は長男、次男とも通常の贈与を適用するということもできる。
つまり、片親だけに適用することもできるし、両親共に適用を受けることもできるわけだが、両親から贈与を受ける場合には、それぞれについて特別控除が受けられるので、父からの分2,500万円、母からの分2,500万円の合わせて5,000万円まで特別控除を受けることができるのである。
通常の贈与のように、贈与でもらったものを全部合計して、そこから基礎控除額の110万円を控除するというのとは、ちょっと違うので区別しておきたい。

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通常の贈与とどう違う?

相続時精算課税制度の贈与と通常の贈与との相違点は次のようになっている。

項目 相続時精算課税制度の贈与 通常の贈与
贈与者 年齢制限あり 制限なし
受贈者 20歳以上の直系卑属である
推定相続人・孫
制限なし
受贈者の選択 個別選択できる なし
非課税枠 生涯2,500万円(特別控除) 年110万円(基礎控除)
税率 一律20% 10%から55%までの超過累進税率
計算対象期間 届出後相続開始まで 暦年
申告義務 適用を受ける場合すべて 基礎控除を超える場合
相続時に加算 すべて加算 相続時開始前3年以内の贈与のみ加算
贈与税額の精算 すべての贈与税が精算される
払い過ぎた贈与税額は還付される

相続時に加算された財産にかかる贈与税額のみ精算
還付はなし

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メリット・デメリットは?

相続時精算課税制度と通常の贈与のメリット・デメリットをまとめると、次のようになる。

相続時精算課税制度の贈与 通常の贈与
贈与できる相手が限定されている 贈与相手が限定されない
年齢制限がある 年齢制限がない
生涯2,500万円の特別控除がある 毎年110万円の基礎控除がある
申告はすべて必要 基礎控除内の贈与は申告不要
税率は20% 税率は贈与額によって異なる
贈与額が多くなると税率が高くなる
配偶者に対する特例がない 配偶者に対する特例がある
すべての財産が相続税の対象になる 相続開始前3年以内の贈与財産だけが相続税の対象になる
贈与財産は物納できない 相続開始前3年以内の贈与財産は物納できる
多額の贈与がしやすい 多額の贈与は税額が高くなるのでしにくい
相続税対策にはほとんどならない やり方次第で相続税対策になる
いったん選択すると通常の贈与をする
ことができなくなる
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相続時の取扱いは?

相続時精算課税制度を適用した場合の相続税額は、次のように計算する。

①相続時精算課税を適用した者の課税価格の計算

相続又は遺贈により取得した財産の価額

みなし相続財産

相続時精算課税の適用を受けた財産の価額(A)(贈与時の価額)

債務及び葬式費用

相続開始前3年以内に取得した財産[(A)を除く]

課税価格

②相続時精算課税不適用者の課税価格の計算

相続又は遺贈により取得した財産の価額

みなし相続財産

債務及び葬式費用

相続開始前3年以内に取得した財産

課税価格

③課税遺産総額を計算する
(①+②)-遺産にかかる基礎控除額=課税遺産総額
④各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額を計算する
⑤④に対する相続税額を求め、それを合計する(相続税額の総額の計算)
⑥⑤を取得した財産額で按分する
⑦各人の納付すべき相続税額を計算する
⑧相続時精算課税適用者の還付税額を計算する

  • (例)
    父親が死亡
      ・相続財産……2億円
      ・相続時精算課税適用財産……4,000万円(イ)
      ・相続時精算課税適用時の贈与税額……300万円
      ・相続人……母親、長男(相続時精算課税適用)、次男
      ・分割割合……母親1/2(1億2,000万円)、長男1/4[2,000万円+(イ)]=6,000万円]、次男1/4(6,000万円)とすると、
  • ①相続時精算課税適用者の課税価格の計算
  • 2,000万円+4,000万円=6,000万円
  • ②相続時精算課税不適用者の課税価格の計算
  • 母親1億2,000万円+次男6,000万円=1億8,000万円
  • ③課税遺産総額を計算する
  • ④各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額を計算する
  • ・母親
    1億9,200万円×1/2=9,600万円
    ・長男、次男
    1億9,200万円×1/2×1/2=4,800万円
  • ⑤相続税額の総額の計算
  • ・母親分
    9,600万円×30%-700万円=2,180万円
    ・長男、次男分
    (4,800万円×20%-200万円)×2=1,520万円
    ・合計2,180万円+1,520万円=3,700万円
  • ⑥ ⑤を取得した財産額で按分する
  • ・母親分
    3,700万円×1/2=1,850万円
    ・長男、次男
    3,700万円×1/4=925万円
  • ⑦各人の納付すべき相続税額を計算する
  • ・配偶者
    →配偶者に対する税額の軽減により納付税額ゼロ
    ・長男

    ・次男
    925万円
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贈与する財産には制約がある!?

住宅型の適用を受ける場合には、金銭の贈与でなければいけないが、一般型の場合は、どんな財産であっても適用の対象になる。
したがって、本来の贈与財産以外にも、たとえば、父が保険料を負担しており、母が亡くなった場合には子が保険金を受け取るという生命保険契約や低額譲渡や債務免除益などのように、みなし贈与財産として贈与税の対象になるものも、この特例の対象にすることができる。

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もらった宅地は相続時に小規模宅地等の特例が受けられる?

相続時精算課税の適用を受けて贈与した宅地等に小規模宅地等の評価減の特例が認められるかというと、これは認められない。
なぜかというと、小規模宅地等の減額特例は、被相続人等が事業の用又は居住の用に供していた宅地等を、相続又は遺贈により取得した場合に認められる制度だからである。
相続時精算課税贈与財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産に加算されるが、これは、相続税を計算するに際して、ただ単に、その贈与した財産の価額を加算するというだけのことである。
相続税の対象となるのだから、小規模宅地等の減額特例の適用もあるのでは、と考えられそうだが、そうは問屋がおろさない。
つまり、相続税の負担を考える上では、小規模宅地等の減額特例の対象となる宅地等は、相続時精算課税制度の適用を受けてはいけないということである。

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どんな人が使うとよいか

  • ①相続税がかからない人
  • 相続時精算課税制度とは、一定の直系親族間贈与に認められた贈与の特例で、2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、それを超える部分の金額に対して一律20%の税率で贈与税がかかり、その贈与した財産は、相続時に持ち戻しされて相続税の対象に取り込まれる制度である。
    したがって、もともと相続税がかからないという人であれば、この制度を使ってもなんらデメリットはないので、積極的にこの制度を使うことをお勧めする。
    また、2,500万円を超える財産の贈与をすると、その超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかるが、相続時には還付されるので、早期に財産を移転させておきたいという場合には使っておくとよい。
    ただし、贈与税を払うのもいやだし、相続税の申告をするのに費用がかかるからいやだ、というのであれば、先に通常の贈与を使って財産を減らしておき、その後にこの相続時精算課税制度を適用する、といったことも検討するとよい。
  • ②相続税の実効税率が20%以内の人
  • この特例は、贈与財産のうち2,500万円を超える部分に対して一律20%の税率の贈与税が課せられる。
    したがって、相続税がかかる人で、その実効税率が20%以内という人であれば、税金を先に払うか後に払うかという違いはあるけれど、早い段階で財産の移転ができ、かつ、計画的に行えるという点で、この制度を活用するメリットがあるといえる。
  • ③相続税の実効税率が20%を超える人
  • この制度は、贈与した財産を相続時に持ち戻して相続税額を計算するので、相続税の実効税率が20%を超える人については、あまり節税効果は期待できないが、次のような効果もあるので検討してみるとよい。
    (イ) 収益物件などを贈与すると、そこから上がる収益部分は受贈者のものになるので、贈与者(被相続人)の財産の増加をストップさせることができる。
    (ロ) 相続時に持ち戻しするときの財産の価額は、贈与時の価額であることから、将来的に財産の価額が上がる見込みのものを贈与しておけば、値上がり部分には相続税はかからないことになる。
    (ハ) 特定の財産を、特定の相続人に確実に承継させることができる。
    (ニ) とりあえずは、20%の贈与税の負担だけで財産の移転ができる。
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どのように使うのがよいか

この相続時精算課税制度には、次のような活用方法が考えられる。

  • ①資金援助
  • 一般的な使い方としては、子供や孫への資金援助であろう。ローンの返済資金であるとか、車の購入資金、住宅資金の頭金などとして活用できる。
    ただし、住宅の購入資金を贈与するのであれば、お金を出してあげるより、建てた(購入した)住宅を贈与してあげる方が有利になる場合が多いので検討するとよい。
    なぜなら、住宅で贈与する場合の財産の評価は、土地は路線価評価(固定資産税評価額に倍率をかけて計算する地区もある)、建物は固定資産税評価額となるが、いずれも一般的に購入価額より低い評価額になるからである。
  • ②所得税対策・収益移転対策
  • 親の所得税が高い場合には、その収益を生み出す物件を子供に贈与することによって、所得税の負担を軽くすることができる。
    また、子にとっては、収益部分を無税で贈与してもらったことと同じ効果が得られることになる。
  • ③相続税対策
  • 収益物件を子供に贈与すれば、その時点から、その物件からもたらされる財産の増加をストップすることができる。
    また、将来的に評価が上昇すると思われる財産については、早い時点で贈与しておけば、その上昇部分は相続に影響しないので、相続税対策になる。
  • ④遺産分割をめぐるトラブル防止対策
  • この制度を活用して、各子供に財産を移転しておけば、相続時の遺産分割をめぐるトラブルを回避しやすくなる。
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どんな財産を贈与するのがよいか

どんな財産を贈与するとよいかは、この制度をどんな目的で使うかによって違ってくる。

  • ①資金援助の場合
  • 資金援助を目的とする場合であれば、当然、現金であるが、コンスタントに入ってくる収入を手当てしてやるというのであれば、収益物件を贈与するのがよいだろう。
  • ②所得税対策・収益移転対策の場合
  • 親の所得税対策も兼ねてという場合であれば、収益物件を贈与すればよい。そうすれば、子に所得を移転させることができ、子はそれを相続税の納税資金として活用することもできる。
  • ③相続税対策の場合
  • 地価は今後上がるかどうかわからないが、たとえば、宅地開発される予定の土地や再開発地区にあるような土地で、将来土地の価値が上がる見込みのある宅地などは、早々に贈与しておいたほうがいいし、会社の業績がよく将来の事業承継に不安があるというような場合であれば、自社株を贈与しておくとよい。そうすれば、それ以降の財産の価額の上昇は影響しないこととなる。
  • ④遺産分割をめぐるトラブル防止対策
  • 遺産分割めぐるトラブルを事前に防止するためにこの制度を活用するということであれば、どの財産を誰に贈与するかという計画をあらかじめ立て、その計画に基づいて実行するのがよい。
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適用する? しない?

  • ①基本的な考え方
  • 相続時精算課税制度は、生前贈与した財産を相続時に持ち戻し(加算)して相続税を計算する制度であるから、財産の価額が上がっていくものを贈与するという場合以外は、基本的に相続税の節税は望めない。相続税の節税をメインで考えるのであれば、この制度を使うよりも、通常の贈与を使った方がよい。
    では、どのような場合にこの制度を活用するとよいかというと、
     (イ)財産を移転することによって、相続税以外の税(所得税など)の節税効果がある。
     (ロ)子供に贈与税の負担なく資金援助をしてやりたい。
     (ハ)特定の財産を特定の相続人に承継させたい。
    こんな場合であろう。
    また、相続税がかからない人であれば、2,500万円までであれば贈与税も相続税もかからないので、ためらわずに使おう。
  • ②収益物件の場合
  • 収益物件のように財産が財産を生むものについては、この制度を活用して早期に贈与するとよい。そうすれば、その時点から、親の財産が増えていかず、子供がその収益を享受できるようになる。
  • ③財産の価額上昇が見込まれる場合
  • この制度は、贈与した財産を、相続時にその贈与時の価額で持ち戻しして、相続税を計算する制度である。したがって、贈与時の価額が相続時の価額より低い、つまり、評価が上昇していくと見込まれるものは、早いうちに贈与した方がいいし、逆に評価が下がっていくと見込まれるものは贈与しては損ということになる。
    評価が上がっていくと見込まれるものは、早めに贈与しておこう。
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