2 自分の土地に家族が建物を建築するケース


 (ケース)自分の土地を家族が活用
 
       [家族が活用]
   ────────────
        [自分の土地]
    
  <ポイント>

   (所得税)

    ・使用貸借の場合は、地代は徴収してもしなくてもよい。

    ・固定資産税相当額の授受は使用貸借とされる。

    ・賃貸借の場合は、通常の権利金を授受しなければならず、受け取っ

     た額が土地の時価の2分の1以下の場合は不動産所得、2分の1を

     超えるときは譲渡所得となる。

   (キャッシュフロー)

    ・建物からあがるキャッシュは、家族に入る。

    ・家族に建築コストが必要となる。

   (相続税)

    ・賃貸借で通常の権利金を授受しないときは、借地人に対して借地権の

    認定課税(贈与税)がされる。

    ・使用貸借の場合は、土地は自用地評価となる。(通常は使用貸借であ

    ろう) 

    ・賃貸借の場合で通常の権利金の授受があるときは、土地は底地価額、

    相当の地代の支払いがあるときは自用地の80%相当額、相当の地代に

    満たない地代のときは一定の価額によって評価される。

    ・小規模宅地等の特例は、使用貸借か賃貸借か誰が事業を行っているか

    などによって取扱いが違う。

 (1)税務上の注意点

 @ 所得税関係

  このケースでは、家族が建物を建てた時に、賃貸借にするか使用貸借にする

 かによって借地権課税の問題が違ってきます。使用貸借にする場合には借地権

 課税の問題は発生しませんが、賃貸借にするのであれば、通常の権利金相当額

 又は相当の地代を家族から収受しなければなりません。

  収受した権利金は、その額によって不動産所得又は譲渡所得となります。

 A 相続税関係

  家族が建物を建てた時に通常の権利金を授受している場合は、その宅地は貸

 宅地として評価しますが、使用貸借のときは自用地価額によって評価します。

  賃貸借の場合は、家族から通常の権利金を徴収しなければならず、これをしない

 ときは家族に権利金相当額の贈与があったものとみなされて贈与税がかかります。

 (2)建物を建てたときの課税関係

  個人の土地に家族が建物を建てた場合は、その土地の貸借関係が賃貸借なの

 か使用貸借なのかによって、その取り扱いが異なってきます。また、賃貸借の場合

 は、権利金の授受があるのか、地代はいくらかなどによっても課税関係が違います。

 @ 賃貸借である場合

 (イ)自分に対する課税関係(所得税)

   地主(自分)が自分の土地を貸付け、権利金を収受した場合は、その受け取った

  権利金の額によって、次のような課税関係が生じます。

  (a)権利金の額が土地の時価の2分の1以下である場合

   その受け取った権利金の額が土地の時価の2分の1以下である場合には、その権

  利金相当額は、不動産所得の収入金額となります。

  (b)権利金の額が土地の時価の2分の1を超える場合

   その受け取った権利金の額が土地の時価の2分の1を超える場合は、借地権の譲

  渡があったものとみなされますので、この場合には譲渡所得の収入金額となります。

  なお、借地権の設定に際し、権利金を授受しない又は権利金を低額にする代わりに

  有利な条件で金銭を貸付けるという場合がありますが、このようなときは、その経済

  的利益の額を権利金の額に加算した金額を権利金の額とみなして、譲渡所得となる

  かどうかの判定をします。

  (C)課税関係が生じない場合

   権利金を収受しないときは、地主(自分)には課税はありません。

 (ロ)家族に対する課税(贈与税)

  土地の貸借が賃貸借の場合は、家族間取引であっても、権利金の授受がなかったり、

 又は相当の地代の支払いがないと家族に対して権利金相当額の贈与税の課税関係が

 生じますので注意してください。

  なお、この取扱いは、権利金を授受する慣行のある地域での取扱いですから、建物を

 建てた場所が、権利金を授受する慣行のない場所である場合にはこの取扱いはありま

 せん。権利金の授受の慣行があるかどうかは、その場所の借地権割合で判断します。

 その割合が30%未満であれば、借地権の慣行がないものとみなされます。

  (a)通常の権利金の授受がある場合

   借地権の設定に際して、通常の権利金の授受がある場合は、家族には特に課税関

  係は生じません。

   ※通常の権利金とは、世間一般でやりとりが行われている権利金のことです。

  (b)通常の権利金に満たない権利金の授受がある場合で、相当の地代の支払いがある
    とき

   通常の借地権の額に満たない権利金の授受であっても、次の算式で計算した相当の

  地代の支払いがあるときは、家族には課税関係は生じません。

   相当の地代=(土地の自用地価額−実際に支払った権利金の額) × おおむね
     (年額)                 及び特別の経済的利益の額    年6%

   ※土地の自用地価額とは、その土地の相続税評価額の過去3年間の平均額をい
     います。

  (c)権利金の支払いがない場合で相当の地代の支払いがある場合

   権利金の支払いが全くない場合であっても、その支払われる地代の額が、相当の地

  代であるときは、家族には課税関係は生じません。
    例)相当の地代
       ・土地の自用地価額       5,000万円
        (路線価等により評価した価額)
       ・権利金の授受          なし
        相当の地代=5,000万円×6%=300万円/年間    

  (d)通常の権利金に満たない権利金の授受がある場合で、相当の地代に満たない地代
   の支払いがある場合

   通常の権利金に満たない権利金の授受があり、かつ、相当の地代に満たない地代を

  支払っている場合には、次の算式で計算した金額から、支払った借地権の額及び特別

  の経済的利益の額を控除した金額が、借地権を設定した時に、地主(自分)から家族に

  対して贈与があったとみなして贈与税が課税されます。

   自用地価額×借地権割合×(1−実際の支払地代の年額−通常の地代の年額)
                       ――──────────────────
                          相当の地代の年額−通常の地代の年額

   ※1 相当の地代の年額は、支払った権利金の額等がある場合であっても、これらの金

     額がないものとして計算した金額によります。

   ※2 借地権割合は、国税局長が定めた割合(路線価地図に記載されたもの)を使います。  

  (e)権利金の支払いがない場合で相当の地代に満たない地代の支払いがある場合

    借地権の設定に際し、権利金の支払いが全くなく、かつ、その支払われる地代の額が、

   相当の地代以下の地代であるときは、上記算式で計算した金額が、借地権を設定した

   時に、貸主(自分)から家族へ贈与したものとみなされ、贈与税が課税されます。

 A 使用貸借の場合

 (イ)自分に対する課税(所得税)

   使用貸借である場合は、権利金の授受も地代の収受がありませんので、基本的に課税

  関係は生じません。

 (ロ)家族に対する課税(贈与税)

   権利金を全く支払わず、また、地代も全く支払わない場合であっても、その貸借が使用貸

  借であるときは、家族には課税関係は生じません。
    
 
 [権利金課税]
地主(自分)に対する課税 借主(家族)に対する課税
通常の権利金を授受する
場合
・権利金は不動産所得又
 は譲渡所得(時価の2
 分の1以上の権利金を
 受け取った場合)として
 課税
・支払った権利金は借地
 権(非償却資産)の取得
 費
通常の権利
金を授受し
ない場合
相当の地代
を授受する
場合
同上 ・権利金課税特になし
相当の地代
を授受しない
場合
同上 ・権利金相当額の贈与が
 あったものとして贈与税
 課税あり
使用貸借の場合 課税関係なし 課税関係なし
    
 (3)地代の取扱い(所得税)

 @ 生計を一にしている場合

  所得税では、事業者が生計を一にする親族に対して、不動産所得又は事業所得にかかる

 賃料、借入金の利子などを支払った場合は、その支払った金額は、必要経費に算入されま

 せんが、その支払いを受けた親族に不動産所得の収入を得るために要した費用があるとき

 は、その経費の額をその事業者の必要経費に算入することができるとされています。また、

 生計を一にする親族の有する資産を無償で事業主が事業の用に供している場合には、その

 資産にかかる必要経費に算入すべき金額を、その事業主の事業にかかる所得の金額の計

 算上、必要経費に算入することができるとされています。

 A 生計が別の場合

  生計が別の親族に対して不動産所得又は事業所得にかかる給与、賃料、借入金の利子な

 どを支払った場合は、その費用の額が適正であるならば、その経費の額は、その事業者の必

 要経費に算入することができます。

 B このケースの場合

 (イ)賃貸借の場合

   この規定によりますと、生計を一にしている親族間で賃貸借契約を結び、賃料を支払っても

  経費にもならず、収入にもならないこととなり、いささか不自然な取扱いとなりますが、これは、

  税務では、生計を一にする親族間で賃貸借契約を結ぶということをおそらく予定していないか

  らだと思われます。通常、生計を一にする親族間においては、借地権のような強い権利関係

  を設定しませんから、このような取引きをする場合には、その取扱いを確認した方がいいでし

  ょう。

 (ロ)使用貸借の場合

   使用貸借の場合は、原則として、地代の収受をしませんからこうした取扱いは発生しません。

  ただし例外的に、土地の固定資産税相当額を地代として支払う場合は、その費用は家族の必

  要経費にはなりませんが、地主(自分)が支払った土地の固定資産税は家族の必要経費とする

  ことができます。

(4)相続時の取扱い

  個人の土地に家族が建物を建てた場合の土地等の評価は、借地権課税と同じように、その土

 地の貸借関係が賃貸借なのか使用貸借なのかによって、また、賃貸借であれば、権利金の授受

 があるのか、地代はいくらかなどによっても異なってきます。

 @賃貸借の場合

 (イ)自分の土地(貸宅地)の評価

 (a)通常の権利金を授受している場合

   通常の権利金の授受がある場合の土地の評価は、貸宅地として、次の算式によって求めた

  金額によって評価します。

    土地の価額=自用地価額×(1−借地権割合)

 (b)権利金の授受がない場合で相当の地代を収受している場合

   相当の地代を収受している場合のその土地の評価は、その土地の自用地としての価額の80%

  相当額によって評価します。相当の地代を支払っている場合は、本来、借地権の価額はゼロなの

  ですが、貸宅地は使用制限があること、また、借地権の慣行のない地域においても20%の借地権

  部分を控除して評価していることから、このような扱いとされています。

    土地の価額=自用地価額×80%

 (c)一部権利金の授受がある場合で相当の地代を収受している場合

   一部権利金の授受がある場合の土地の評価は、その土地の自用地としての価額から、次の算

  式によって求めた借地権の価額を控除した金額によって評価します。ただし、その求めた価額が、

  自用地価額の80%相当額を超えるときは、自用地価額の80%相当額となります。

    土地の価額=自用地価額−借地権の価額

    借地権の価額=

          自用地価額×借地権割合×(1−実際の支払地代の年額−通常の地代の年額)
                               ──────────────────
                              相当の地代の年額−通常の地代の年額

 (d)相当の地代に満たない地代を収受している場合

   収受している地代の額が通常の地代を超え、相当の地代に満たない場合の土地の評価は、上

  記(c)と同様になります。

 (ロ)家族の借地権の評価

 (a)通常の権利金を支払っている場合

   通常の権利金の授受がある場合の借地権の評価は、その借地権の目的となっている宅地の自

  用地としての価額に、国税局長が定める借地権割合を乗じて計算した金額により評価します。

   借地権の価額=自用地価額×借地権割合

 (b)一部権利金の支払いがある場合で相当の地代の支払がある場合

   借地権の設定に際し、一部権利金の授受がある場合の借地権の評価は、次の算式で計算した

  金額によります。
    
   借地権の価額=自用地価額×借地権割合×(1−実際の支払地代の年額−通常の地代の年額)
                                  ──────────────────
                                    相当の地代の年額−通常の地代の年額  

 (c)権利金の支払いがなく相当の地代の支払いがある場合

   通常権利金を支払う取引上の慣行のある地域において、権利金の授受に代え相当の地代を支

  払っている場合の借地権の価額は、ゼロとして取り扱われます。

 (d)相当の地代に満たない地代を支払っている場合

   借地権が設定されている土地について、支払っている地代の年額が通常の地代の額を超え、相

  当の地代に満たない場合の借地権の価額は、上記ロの算式で求めた金額により評価します。

 A 使用貸借の場合

 (イ)自分の土地の評価

   使用貸借により貸付けられている土地の価額は、使用貸借に係る土地等の使用権の価額がゼロ

  ですから、自用地としての価額により評価します。

 (ロ)家族の借地権の評価

   建物の所有を目的として使用貸借により土地の仮受けがあった場合の、その使用権の価額はゼロ

  として取り扱われることとされています。したがって、使用貸借にかかる土地にかかる借地権はゼロ

  として評価します。

[相続時の評価]      
  自分の土地の評価       家族の借地権の評価
通常の権利金を授受
する場合
・自用地価額 ×
   (1−借地権割合)
・自用地価額 × 借地権割合
     
通常の権
利金を授
受しない
場合
相当の地
代を授受
する場合
・自用地価額 × 80%
・ゼロ
相当の地
代を授受
しない場
・自用地 − 右の算式で
 価額     求めた借地
         権の価額
・自用地価額 × 借地権割合
 
 ×      実際の支払   通常の地
   (1 − 地代の年額 − 代の年額 )
        相当の地代 − 通常の地
        の年額      代の年額
使用貸借の場合 ・自用地価額 ・ゼロ
   
(5)相続税の効果

 (土地の評価)

 (イ)使用貸借の場合

   この場合は、土地は自用地価額で評価されますので、この場合には相続税の効果はありません。

 (ロ)通常の権利金の授受がある、家族に借地権利金の贈与税課税がされた場合

   この場合は、家族に借地権があるとされますので、その土地の価額は自用地価額から借地権の

  価額を控除した価額によって評価することとなります。

 (ハ)相当の地代の支払がある場合

   相当の地代の支払がある場合は、家族に借地権はないものとして取り扱われます。したがって、

  本来であれば、その土地の価額は、その土地の自用地としての価額により評価することとなるので

  すが、建物がある場合は、利用制限があることや借地権の取引慣行のない地域においても20%の

  借地権部分を控除して評価していることなどから自用地価額の100分の80に相当する金額で評価

  します。

(6)小規模宅地等の特例の取扱い

   小規模宅地等の取り扱いは、家族が生計を一にするかどうかにより、次のように取り扱われます。

 @自分と生計を一にする親族の建物である場合
  
     生計を一にする
     親族の建物   
   ─────────  
      [自分の土地]       。

 (イ)生計を一にする親族が事業を行っている場合

  イ.生計を一にする親族が事業を行っている場合・・・その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額の
                                 対象となります

  ロ.建物を他者に相当な対価で貸付けている場合・・・その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額
                                  の対象となります。

 (ロ)自分が事業を行っている場合

  自分が事業を行っている場合は、その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。

 (ハ)同族会社が事業を行っている場合

   次の要件を満たす場合は、特定同族会社事業用宅地として400uまで80%相当額が減額されます。

  イ.相続開始直前において、被相続人もしくは被相続人と生計を一にする被相続人の親族が、株式

   又は出資の50%以上を有する会社の事業の用に供されていること

  ロ.その会社の不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業以外の事業に供されていること

  ハ.相続等によりその宅地等を取得した親族が相続税の申告期限においてその会社の役員である
   こと

  ニ.その親族が相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その会社の事業の用に
   供していること

   なお、その宅地等を数人で相続した場合には、その者のうちに1人でも上記の要件に該当する者

  がいれば、特定同族会社が事業の用に供している部分の全体が適用対象となります。
       
 A 自分と生計を別にする親族の建物である場合
  
      生計を別にする 
       親族の建物   
     ──────── 
       [自分の土地]   

 (イ)生計を別にする親族が事業を行っている場合

   小規模宅地等の特例は被相続人(自分)又は被相続人と生計を一にする親族が事業の用に供して

  いた土地に対して適用されます。したがって、生計を別にする親族の事業の用に供していた土地には

  適用がありません。

 (ロ)自分が事業を行っている場合

  イ.建物の貸借が無償である場合・・・その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。

  ロ.相当な対価で賃貸されている場合・・・生計を別にする親族が事業の用に供していることとなるので、
                          適用対象になりません。

 (ハ)生計を一にする親族が事業を行っている場合

  イ.建物の貸借が無償である場合・・・その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。

  ロ.相当な対価で賃貸されている場合・・・生計を別にする親族が事業の用に供していることとなるので、
                          適用対象になりません。

  ハ.本人と生計を別にする親族との間で相当な対価の支払がある場合
                      ・・・その敷地は事業用宅地等に該当し、50%減額の対象となります。

                         (「税理士・FPのための不動産活用の税務」より抜粋)

 
   
                                                                    戻る
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